更新日:2017年07月08日
こんにゃくと共に人生を歩み続ける生産者/新内農園(広島県)
こんにゃく芋の栽培から、加工・販売まで一貫管理しているこんにゃくの生産者・新内農園。山口市から高速道路を約2時間、東城ICを降りてさらに約1時間、車1台がギリギリ通れる山道(すぐ横は崖!)を登っていきます。標高650m、中国山地の大自然に囲まれた静かな場所に、広大なこんにゃく畑は広がっていました。
ここ、広島県神石(じんせき)高原は良質な水と、夏でも涼しい気温でこんにゃく栽培にぴったりな土地のため、多くのこんにゃく農家さんがいらっしゃいます。中でも新内農園は契約農家や外部に任せず、すべて自分たちの手で栽培するこだわりよう。新内社長のこんにゃくに対する熱い想いを取材してきました。
在来種は最高品種!
「こんにゃくと言えば群馬県のイメージが強いけど、在来種芋の栽培は神石がNo.1なんだよ。」と新内社長。新内農園では広さ75000㎡(東京ドーム約1.6倍!)の畑で在来種を栽培しており、神石高原の中でも最大級の作付け面積を誇ります。
在来種とは?
国内で昔から栽培されてきた品種。病気にも弱く、山間部の傾斜地でなければ栽培が難しいですが、他の品種に比べ、粘りが強くマンナンの含有量が多いのが特徴です。マンナンは凝固成分なので、水酸化カルシウムなどの凝固剤を多用せずにこんにゃくが作れます。こんにゃく特有の臭みは、芋と凝固剤が反応して発生するので、凝固剤の使用量を抑えれば、こんにゃく本来の味を味わえるんです。それ故、最高品種とも言われることがあります。
因みに、群馬県は平地栽培ができて、病気にも強い交配種の赤城大玉という品種が多いんだそう。
こんにゃく芋の栽培で驚いたのはその期間の長さ!
まず生子(きご)というこんにゃく芋の“赤ちゃん”を春に植付けをします。これを秋に収穫し、再度次の春に植え、また秋に収穫。コレを3年続けて芋を大きく太らさせていくんです!
3年目の芋は、製品に加工されるまで冷凍保管され、一年かけて使い切ります。芋を冷凍し休眠状態にすることで、加工するまでに品質が落ちることなく、一年を通じて『旬の味』を味わえるんです。
時間がかかってもおいしい作り方をする!
こんにゃくの製造方法は大きく分けて2パターン。1つは、ペースト状に練ったトロトロのこんにゃくをパックに詰めた後、加熱する「生詰製法」で、短時間でたくさん作れます。一方、昔ながらの伝統製法「缶蒸し製法」は、その名の通りペースト状に練ったこんにゃくを大きな缶に入れて時間をかけて蒸し、出来上がった大きなこんにゃくを市販されているサイズにカット。新内農園でも製品によって2つの製造方法を使い分けています。
新内専務曰く、「商品になるまで約2 日かかるので、全国でも少なくなってきていますね。生詰製法のこんにゃくだとえぐみや渋みもパックすることになりますが、缶蒸製法はアクが抜けて食感や歯ごたえが格段に良くなります。」
市販のこんにゃくって少し黒っぽい感じがしませんか?
それは芋を精製して作られるこんにゃく粉だけで作られているから。実はこんにゃく粉だけで作ると白くなり、見た目がこんにゃくっぽく無くなるので、わざわざ海藻粉末を使って着色しているんです。さらに、粉砕したこんにゃく芋の皮を加えて、あたかも生芋から作られたようにすることもあるんだとか…
神石の名をもっと広めたい!
新内社長は御年82才!にもかかわらず、今も朝から畑を見回り、一日雑草を抜いていることもあるほど。その元気の源は、溢れるほどのこんにゃくへの情熱なんです。「19歳で親の反対を押しきり、今の場所を開耕して農業を始めたんじゃ。戦後で最初はまったく物が売れんかったけぇね。物を売る苦労は重々知っとる。それでも負けずに、良いと思ったものをお客さんに伝えていった。そしたら買ってくれるようになったんじゃ。在来種はほんとにうまい!新内農園を有名にすることよりも『在来種と言えば神石』とみんなが思ってもらえるように、神石高原が一体となってがんばっていきたいね」と非常に力強い口調と眼差しで語るこんにゃくへの想いは、とどまることを知りません。
そんな社長のお話を聞いてると、新内農園のこんにゃくが美味しく、優しい味がする理由がわかる気がしました。