更新日:2017年06月17日
牛たちの“ごはん”収穫しました!/むつみ牧場(山口県)
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むつみ牧場
水の張られた田んぼからは、カエルの鳴き声。草木を揺らす、爽やかな初夏の風。ゴールデンウィーク真っ只中の5月上旬、秋川牧園のホルスタイン牛を飼育しているむつみ牧場(山口県萩市)を取材してきました!
プロジェクト発足から6年
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現在の自給飼料を育てる畑。心が洗われる様な美しい風景です。
プルルル~♪5月2日、手嶋牧場長から「天気も良さそうなので明日から自給飼料の草刈りをするよ~!」との電話が。明日!?と急な予定で少し驚いたものの、幸運なことに予定も合い、スタッフ3人で取材に行くこととなりました。
むつみ牧場では、飼育する乳牛に与える飼料用の牧草の一部を自分たちでつくる取り組みを行っています。「自分たちの手で、より安心安全な飼料を!」と、手嶋牧場長を中心に2011年からスタートしたこの取り組みは、草木に覆われた耕作放棄地を開墾するところからの始まりでした。365日続く乳牛のお世話の合間を縫っての作業は決して平坦なものではありませんでしたが、6年経った今では、毎年約150tの飼料を自分たちで作るまでになりました。
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開墾前の畑。草木に覆われ地面も見えず…。
さらに、耕作放棄地となっていたむつみの土地が、牧草用の畑として再び息を吹き返したことで地域の方にも喜んでいただけているようです。
晴れた!今だ!収穫だ!
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機械で取りきれなかった牧草は、人の手でかき集め再度収穫。大切に育てた飼料。取り残しません!
飼料となる牧草の収穫は3日間連続で行うのですが、この収穫のタイミング決めがすごく難しいのです。収穫の際、最も重要となるのが“天気”。牧草は、刈り取った瞬間から1度でも雨に濡れてしまうと全てが水の泡。一旦水を含んだ牧草はその後の発酵が上手くいかないうえ、栄養分も流れ出てしまうため、数カ月かけて育てた牧草も使えなくなってしまうのです。
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牧草を収穫する手嶋牧場長
そのため、収穫前は天気予報とにらめっこなのだとか。さらに、牧草にも旬があり、成長が進み花が咲いてしまうとそちらへ栄養が使われてしまい栄養価の低い牧草になってしまいます。毎日確実に進む牧草の成長と、人間がどうすることも出来ない天候を見極めながら、よし!今だ!と行われるのがこの収穫なのです。手嶋牧場長の急な電話にも納得です。
いわば “草の漬物”
刈り取った牧草は、専用機械で1つ約200㎏のロール状にしラップを巻いて密閉。こうすることで、嫌気性の乳酸菌が力を発揮し発酵が進み、保存性、栄養価、美味しさがアップします。菌の力で発酵させるなんて、なんだか「草の漬物」みたい!納豆やヨーグルトなど発酵食品好きの私たちですが、牛たちもそれは同じのよう。この手作りの飼料を毎日お腹いっぱい食べてくれています。
「完成した飼料にも味の違いがあるんですか?」と伺うと「上手に出来た飼料は甘酸っぱい香りがするんだよ。牛の食いつきも違うんだ。」と手嶋牧場長。牧草の水分量や収穫時期などの僅かな違いで、味にも違いが生まれるんだそう。ちなみに今回の牧草の出来は…上々とのこと!このまま発酵が上手くいき、牛たちに美味しく食べてもらうのが今から楽しみです。
安心安全な飼料を追求した結果、行き着いたのは「自分たちの手でつくること」。日本では、自給飼料の取り組みを行う牧場はまだまだ少数派。むつみ牧場でも、自分たちで全てを賄うまでにはもう少し時間がかかりそうですが、この自給飼料の取り組みが、秋川牧園の未来、そして日本の未来にも繋がっているはずです。
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口の周りにたくさん牧草をつけた牛を発見!なんだか嬉しいです。た~んと召し上がれ♪