更新日:2017年06月20日
ずっと農業を続けるために/パンドラファーム(奈良県)
じっとしているだけでも汗が滲む、8月初旬の奈良県五條市。秋川牧園では、梅干しやあんぽ柿でおなじみの、パンドラファームグループを訪ねてきました。
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パンドラファームグループ 辻田さん
600年以上続く梅と柿の歴史
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梅や柿の木で覆われた美しい五條・吉野地方の山々。
パンドラファームグループの始まりは、現在グループ会社の代表である、王隠堂誠海(おういんどうまさみ)さんにあります。社名にもなっているこの珍しい苗字は、今から遡ること約700年前の南北朝時代。京から吉野に逃げてきた後醍醐天皇を堂にかくまってあげたことから、天皇より授かった苗字なんだそう。
そしてこの時にはすでに、吉野の地では梅と柿の栽培が行われていたんだとか。約700年も前から、この地は梅と柿に囲まれた町だったようです。王隠堂誠海さんが農業を始めたのは、今から約40年前の農薬使用全盛期。父親の跡を継ぎ農家になると決めたものの、農薬のためか周囲で具合を悪くする人がどんどん増えていったんだそう。
一時は農業を辞めようかとまで考えたものの、続けるならば「農薬を使わない持続可能な農業をしよう」と決心。農薬の低減と有機農業への転換を図り、40年経った今では、グループの生産者だけでも300人を超える規模となりました。
50℃超え!灼熱のビニールハウス
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この暑さの中での作業は、想像しただけでもクラクラ倒れそう…。
伺ったこの日、工場では主要商品である「梅干し」の製造真最中。使用する梅は、奈良を中心とした和歌山、三重の自社農場で栽培しています。まずは、梅を干す過程を見学です!
夏の日差しに照らされたビニールハウス内には、パレットにのった梅がずら~っと整列。「この中ほんとに暑いですからね」と言われ覚悟を決めて入ったものの、その中はまさにサウナ状態!夏のハウスは50℃を超えるそうで、ハウス内の温度計は振り切って壊れてしまったそう(^_^;)
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干して1日目の梅干し。まだ中身は黄色のままです。
ここでは、「天地返し」といって梅がむらなく乾くよう上下をひっくり返します。1日で表面は乾き白っぽくなりますが、まだ中身は黄色のまま。この色のまま漬けると美味しい梅干しにはらないそうで、約3日かけてしっかり乾燥させていきます。
2000回のスクワット!
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体力の必要な塩漬け作業。機械で出来ればいいのですが、梅は柔らかく潰れやすいため人の手で一つ一つ丁寧に漬けています。
次は、先程干した梅を塩漬けする工程。梅がのったパレットを持ち1パレットずつ塩漬けをしていくのですが、実は…このパレットの重さは約2kg、梅は約3㎏!手に5㎏もの重りをかかえて、一日中スクワットをしているようなものなんです。暑さとは違う意味で、考えただけでクラクラしてきました。
けれど、作業をしている男性スタッフは涼しげな顔。この日案内してくれた辻田さんと工場長も「僕たちも入社した時はここを担当してたんだよ~」と懐かしそうに笑います。ここはまさに、パンドラファームの登竜門なのかもしれませんね。
体力の必要な塩漬け作業。機械で出来ればいいのですが、梅は柔らかく潰れやすいため人の手で一つ一つ丁寧に漬けています。
持続可能な農業を
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目にも楽しい料理の数々。この後も、桜塩でいただく天麩羅、梅のジュレなど…パンドラファームの味を堪能!
パンドラファームでは、地元の梅や野菜を使用した古民家レストラン「農悠舎王隠堂」を運営しています。ここでは食事はもちろん、農業体験や梅ジュースの手作り体験も一緒に提供。これは、このレストランを通して改めて地元の食材の魅力を知ってもらい、地産地消や若い世代の人たちへ農業を伝えていきたいという想いから。
『環境のことを考えた栽培方法。食べる人のことを考えた安心の商品づくり、そして、若い世代に農を伝えるレストランなど。』これら全ての取り組みが、スタート時に掲げた「持続可能な農業」に繋がっているのかもしれません。