更新日:2016年11月01日
たかが缶詰…じゃない!/かもめ屋(静岡県)
「かもめ屋のツナ缶」は、今から26年前、1人の主婦によって生まれました。その人は、かもめ屋の代表、色本幸代(しきもとさちよ)社長。今でこそ珍しくない“(化学調味料)無添加のツナ缶”がなかった当時、あちこちのメーカーに断られた末に、“小ロットかつ品質に妥協しない”ツナ缶製造を引き受けてくれたのが、同じ静岡県清水市にある缶詰食品メーカーの伊藤食品でした。
つくっているのは 伊藤食品
伊藤食品はもともと漁船の鉄鋼部品メーカーですが、食品部門として缶詰を製造してきました。現在は独立し、「安心・高品質」をモットーに、オリジナル商品のほか委託製造も行っています。
〈かもめ屋のツナ缶ができるまで〉
「ツナ缶で一番手間がかかるのは下処理です」と工場長の小沢さん。
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伊藤食品 工場長の小沢さん
蒸しあげたマグロを熟練スタッフが手作業でほぐし、皮や血合い、骨などを特殊なナイフでこそげ取りますが、見ていてもかなりの手間とわかります。そこで近年の国内のツナ缶は、冷凍ロイン(海外で漁獲されたマグロを主にアジア圏で節状に下処理し凍結したもの)を使用するのが主流で、缶詰のランクに合わせて品質の良い1本ものの冷凍マグロをブレンドしながらつくるのだそう。
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蒸しあげたマグロを熟練スタッフが手作業でほぐし、皮や血合い、骨などを特殊なナイフでこそげ取ります
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冷凍ロイン(海外で漁獲されたマグロを主にアジア圏で節状に下処理し凍結したもの)
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伊藤食品担当:金子さん
また容器も、開発当時から「エポキシ樹脂※フリー」のものを使用。「かもめ屋さんのツナ缶は、国内でも最高スペック(仕様)だと思います」と、伊藤食品の担当・金子さんも太鼓判を押すのが、かもめ屋のツナ缶なのです。
※缶詰やカップ麺容器の内側塗装に使用される、エポキシ樹脂に含まれるビスフェノールAは、体内に取り込まれると神経系やホルモン系をかく乱する懸念があるとされます(環境ホルモン)
企画・プロデュース かもめ屋
「家族のためのツナ缶」がはじまり
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かもめ屋の皆さん(右が代表の色本社長)
最初は「化学調味料(アミノ酸)が入っていないものを」で始まったかもめ屋のツナ缶開発ですが、当時社会問題となった水爆実験をきっかけに、原料の1つひとつを吟味していくうちに「それなら最高のツナ缶をつくればいいじゃない、と思った」と色本さん。断られても諦めなかったエネルギーの源は?と聞くと「そうねえ、小さい頃から頑固な性格だったとも思うけど…」と言った後、「いつも、家族や友人といった“いちばん身近な人”が食べる姿を想像しているわね。」と一言。
缶詰につまった、大切な人への想い。取材中ずっと笑顔の絶えない生産者の皆さんの心根には、そんな、商品への静かで熱い想いがあることを学ぶことができた取材でした。