更新日:2016年05月06日
大阪の魚の台所/大商水産(大阪府)
大阪卸売市場を訪問!
大阪市中央卸売市場・東部市場内に社を構える「大商水産」。昭和39年に創業し、水産品の卸売りはもちろん、自慢の目 利きで仕入れた魚で「西京焼」などの漬け魚を、自社調理場で加工するメーカーでもあります。また、実際の店舗も近畿エリアの数か所の百貨店内にあり、主力の干物や漬け魚などの商品を販売されています。
取材に伺ったのは早朝の5時半。が、すでにセリ(5時頃)は終わっており、問屋さんはそれぞれ片づけを…セリに間に合いませんでした(涙)。それでも営業担当の新本さんと場内を散策していると、大きな魚を解体する様子や忙しく 往来する仲買人の方も見られ、「東大阪の台所」を担う東部市場の活気を垣間見ることができました。
しかしそんな東部市場内に、ちらほらと目立つ空き店舗。新本さんに聞くと「多くは跡継ぎがいないなどの理由で、店を畳んでしまった」とのことで、何年もこの状態なのだとか。
ならば“新規参入”する会社(企業)はないのかな…と思い訊ねると、そこには水産卸業界の厳しい「習わし」が。卸市場で買付をするためにはその権利(買参権)を取得する必要がありますが、様々な条件があり、一企業が新たに取得するのはかなり難しく、この東部市場で新規参入した会社は現在「ほぼゼロ」なのだとか。「(水産卸業界の)こういう状況も変わっていかないと、水産物の消費も増えないんですけどね…」 と、新本さんは少し厳しい表情で話されました。
「魚離れ」から新分野を開拓
卸市場の活気に陰りが見えるのは、最終的な消費者である私達日本人の「魚離れ」もその要因の一つとなっています。現代食の欧米化を受け、平成18年頃からは、日本人1人当たりの魚介類と肉類の消費量は逆転。購入する魚の重量も年々少なくなっている傾向が続いている(※厚生労働省「国民栄養調査」より)のに加え、水産市場で繰り返される「価格の叩き合い」に、業界内には疲弊感が広がっていました。
こうした流れに危機感を抱いた大商水産は、10数年前に大きく方向転換をはかります。それまでも自社加工の漬け魚はありましたが、切り身魚などを販売していた生協などの取引先に向け、合成添 加物・化学調味料を使用しないタレに変更。
完成した商品を販売してみたところ、たくさんの注文を頂いたそうです。「魚が嫌いではないのだけれど、さばくのが苦手」「切り身や干物は味付けが単調になりがち」といった従来の魚へのイメージが、「こだわりの味付けをしたメインおかずに変えることができる」という手応えに変わっていったのでした。
加工品部門の今後についてうかがうと、「タレの味付けを工夫してバリエーションを増やしていきたいですね」とのこと。さらに、「もっと“大商水産らしさ”を出していこう」と、「魚種や調味料もすべて国産にこだわった商品も開発しているところです」。
日本の水産業界の活気を取り戻そうと、チャレンジを続ける大商水産。おいしいだけでなく、消費者が気軽に調理し、食べることができる魚介品が増えることで、新たな魚文化が広がってほしい…そんな生産者の熱意が伝わってきた取材でした。
「これからもいろいろなおかず商品を開発していきたいですね。」 水産市場の将来を担う新本さんの肩に期待がかかります!