更新日:2015年04月18日
安心野菜の生産者/下瀬さんご夫婦(山口県)
(写真)つぶらな瞳に満面の笑みが素敵な善弘さん。努力家で愛情に満ちた優しい眼差しに、明るい笑顔が魅力の幸子さん。
秋川牧園から車で走ること40分。左に瀬戸内海を望み、右に目線を向けると、遠くに山を臨み、その山すそにはのどかな田園風景が広がる山口市秋穂二島。大規模ではないものの其処ここに田畑が広がるこの温暖な地域で、下瀬さんご夫婦は約5000㎡の畑を耕し、年間30品目以上のお野菜を生産されています。
捕まえた!手作業で800匹!!!
この道40年以上のベテラン農家、下瀬さんご夫妻。昭和50年、当時、幸子さんの母親の血圧が高いということで心配していた中、「玄米食がいい」という話を聞き、「米も野菜も、せっかく食べてもらうなら有機のものを」という幸子さんの母親に対する思いから農薬や化学肥料に頼らない農業が始まりました。
「もぉ~、最初の頃は、そりゃもう、とにかく大変!」と幸子さん。指導してくれる人は誰もいない。まったく知識がないところから農業雑誌を読んだりして自分で試行錯誤。害虫・雑草・病気と奮闘する日々。売り物にならない野菜も少なくなかったそうです。
「害虫で大変なことがあったなぁ。ある年、にんじんを栽培していたんだけど、ヨトウムシ(夜盗虫:人参の宿敵)が大量発生して、夜になると葉を食べる音がするほどじゃったんよ。夜中に懐中電灯を頭につけて、一匹一匹捕まえたさ。わしゃ、800匹まで数えたね!それ以上は無理だったけど。佃煮にしても余るくらいバケツに一杯じゃったなぁ」と大笑いで話す善弘さん。
800匹!!?想像するだけでも気が遠くなる話ですが、これが無農薬での野菜作りの現実だと思うと頭があがりません。
野菜作りのノウハウはすべてオープン。教えても、自分はその先に行くから!
幸子さんがサラッと「農業はいかに手をかけないかが大切。コツさえ抑えれば、ほっといたらできるもんよ」と言い切ります。でもそれは野菜作りが簡単、という意味ではなく、手間のかかる無農薬栽培で、どうしたら、喜んでもらえるような立派で美味しい野菜が作れるか、試行錯誤してきた中で得ることの出来た「コツ」があるからこそ、いえる言葉です。
お話の中で、「あの時は●●が原因だったから、■■にしてみた」といろんな野菜での試行錯誤エピソードがたくさん飛び出してきます。
(写真)秋川牧園取引当初より書いている農業日誌。綺麗な字で毎日、記録がつけられています。もう習慣なのだとか。
また、もともと機械業界でお勤めされていた善弘さんは、自作大豆選別機をつくったほど。善弘さんの現在の目標は「草のない有機農業」とか。こまめに処理すれば雑草の種が残らないはず・・・!大変な草取り作業が今より省力化できる草刈機のアイデアがあるそうです。試行錯誤の中、今まで得てきたノウハウで立ち止まらず、常に改善と目標を掲げて新しいチャレンジし、その先へ行くお二人です。
(写真)今までの作付けや施肥状況をすべて記録した冊子。このノウハウの蓄積が幸子さんの宝物。ちなみに、幸子さんはある有機農業研究会に講師として招かれたこともあるそうです。
畑には面白いことがたくさん落ちている
印象的だったのは「発見したり、考えたり、面白いことが農業にはいくらでもある。学問ではないことも畑には落ちている」という善弘さんの言葉。
農業というのはとても奥が深い仕事です。育てる野菜だけではなく、生命力あふれる雑草、病気の原因になる目に見えない無数の細菌やウイルス、多くの虫たち、土壌の中でひそかに息づく微生物、そのどれとも時には上手に付き合い、克服しなければなりません。その大変さを「面白い」と感じるお二人の研究熱心さが、あの大きくて立派な野菜となって形に見えているようでした。
(写真)葉っぱを入れて、女性の上半身ほどもある下瀬さんの大根。シャキシャキ大根葉まで、楽しめます!
わんちゃんも、下瀬さんの野菜が大好き!
下瀬さんご夫婦の愛犬パールちゃんは、下瀬さんが作ったキャベツや大根が大好き!ちなみに、親戚の犬も下瀬さんの野菜はむしゃむしゃ食べるけど、スーパーの野菜は食べないのだとか。良し悪しを見分ける動物がもつ本能でしょうか!?
(写真)「秋川牧園も『野菜識別犬』を飼ったらどうじゃ」と笑う善弘さん。