更新日:2013年08月01日
みりん と みりん風調味料 の違い、とは?/角谷文治郎商店(愛知県)
角谷文治郎商店のみりんは、「米一升でみりん一升!」
「1本199円!」なんて安売りされているみりん。実はそれ、みりんではなく「みりん風」調味料。そして現在ではこのみりん風調味料の方が市場に多く出回っています。
では、本来のみりんとは、一体どのようなものなのか。
200年以上前からみりんや味噌など様々な醸造が盛んに行われてきた愛知県三河地方で、110年以上の歴史を持つ角谷文治郎商店さんに、”みりん”の秘密をお聞きしました!
飲んで美味しいから、料理が美味しくなる!
みりんと 標準的な本みりん とみりん風調味料 の比較 |
「本来みりんは甘味滋養飲料という高級酒なんです。」
そう聞いて、角谷文治郎商店さんのみりんを飲んでみると・・・
リキュールみたいに甘くておいしい!!その美味しさとみりん漬けの可能性にドキドキしました!梅漬けは、砂糖を一切加えていませんが、梅酒のように深い甘み。ローズヒップティー漬けは、すっきりとしたローズヒップと濃厚な甘みのみりんが相まって、カクテルのような美味しさでした。飲料として飲めるほど、みりんがこんなに美味しいものだったとは感動です。
「飲めないものを鍋に入れますか?飲んで美味しいから料理が美味しくなるんですよ。化学調味料はそのままの味だけれど、みりんは1+1=2では終わらない、みりんと素材の相乗効果で、鍋の中では掛け算になって味にでる。それが料理の楽しさだと思います。」と語る角谷社長。たしかに、この美味しさは料理の味を引き立てそうです。
お米の美味しさを みりんで伝えたい
角谷文治郎商店さんは1910年(明治43年)の創業。
1945年の終戦後、グルタミンソーダなどの化学調味料を加えたみりんや、ワインやビールなどの様々なお酒が家庭に浸透したことで、調味料としてもお酒としても昔ながらのみりんを作り続けるには、大変なご苦労があったそうです。1970年代頃には、健康志向の高まりによって、砂糖など甘いものの需要が減っていく”甘さ離れ”が進み、「今後みりんの需要があるのか・・・」と不安を感じることもあったそうです。
しかし角谷さんは、「化学調味料が普及するほど、料理は似たような味になる。また”甘さ離れ”の一方で、野菜や果物に関してはいかに甘くするかと、甘さを追求する現象も起きている。素材を生かす、果物と同じような上品なキレの良さを持つこのみりんは、現代でも求められている甘さなのではないか。」と考えるようになったそう。時代が進むほど、『昔ながら』が逆に個性になったんですね!
さらに、「この甘さはもとをたどればお米の甘さです。お米の美味しさをみりんという形でお伝えしたい。そしてみりんという形だけで終わらずに、その可能性を探して提案したい。」とのお考えのようで、和食や飲料以外にも、洋食・スイーツと様々な料理人とコラボし、レシピを開発。みりんの楽しさ・可能性を広げられています。
角谷文治郎商店さんのHPには、おしゃれなみりんレシピがたくさん掲載されています
他とは違う、角谷文治郎商店のみりんの美味しさとは?
角谷さんのみりんの原材料表示を見てみると、もち米、米こうじ、本格焼酎と材料はいたってシンプル。だけど、このみりんは深く濃厚な甘みがあります。砂糖を加えてないのにこんなに甘いのは、もち米に約75%含まれるデンプン質が麹によって分解され糖になっているから。また、米のたんぱく質は旨味の素であるアミノ酸に分解されます。実はこれ、本来、私たちの体が感じている、「お米の甘さ や 旨み」を舌で味わっているのです。
体が感じているお米の美味しさとは?
お米は、食べると胃で消化されて糖やアミノ酸になって腸で吸収されます。実は、麹の力を借りて、お米を糖やアミノ酸まで分解したものがみりんなのです。それを私たちは舌で味わっている。つまり、このみりんは腸が感じているお米の美味しさを麹の働きを借りて全面に出したものなのです。
デンプンが分解されてできた糖の甘さと、タンパク質が分解されてできたアミノ酸の複雑な旨味、それを舌で味わえるのが米1升からみりん一升が出来る角谷文治郎商店さんのみりん。水あめなどを加えて作るような他のものに比べて、「お米の自然な美味しさ」の濃さが違うのは当たり前ですね!
「砂糖は直接的な甘さで口の中に残りますが、みりんは果物と同じ上品な切れの良さがあります。スッと甘さが消え代わって旨味が出てくる」と静かに語る角谷社長の話を聞くほど、ただ甘いだけではない、”みりん”の奥深さを改めて感じました。