更新日:2017年07月12日

あなたの畑・あなたの牧場がここにある(アグリロハス7月号)

お米が余る、その余剰問題が続いてすでに長い年月になります。このままでは、お米を作ってくださる農家がいなくなる、耕作放棄地がどんどん増えて故郷が荒れて行く…。

こんな不安が永く続いている、昨今の農村の実態があります。ただでも低い日本の食糧自給率が、さらに下がり続ける懸念があります。

 

米作りに孤独に励んだ青春

私が高校に進む頃までは、戦後の日本は食糧難の時代、農家は自分で作ったお米を自分で売ることは許されずに、米はお国に供出。自分が食べる飯米も管理され制限された、今では考えられない厳しい時代だったのです。

ひえ取り、秋川牧園、アグリロハスしかも、我が家は海外からの引揚者で貧困の極致にあったため、学校から帰れば、毎日毎日、月明かりを頼りに深夜まで、田んぼの草取り、ひえ草取りに没頭した記憶があります。

その青春時代は、今でも忘れ得られません。

 

地域循環の新たなうねり 多収穫の飼料米栽培が地域に拡がる

2009年、私は山口県美祢市にある山口県農林技術センター畜産技術センター(畜産試験場)の指導に伴う、「モミロマン」と言われた飼料用米専用品種の視察のため、農家栽培試験圃場に居ました。多くの参加者が圃場に集まる中、その時私は、50年以上も前に必死で取組んだ孤独な稲作の戦いの日々が頭に蘇ったのです。

モミロマンは純粋な日本米ではなく、南方のインディカの遺伝子の入った飼料用米専用品種で、その時が山口県での初お目見えだったのです。お米の多収穫の是非は、その稲が最後まで倒伏せずに頑張れるかで決まります。普通の稲は沢山の収穫量を取ろうとすれば、穂が重くて稲が倒れてしまうのが常ですが、このモミロマンは倒れを知らない稲であることは、私にはすぐに判りました。

そこでこの稲で、10 アール当り1トンのモミ米、玄米では800 ㎏、13 俵を達成することを考え始めたのです。普通の食用米の収穫量は、玄米で10 アール当り550 ㎏、8俵弱程度なので、13俵は、まさに破天荒な多収穫目標でした。この多収穫が夢ではないことを示すために地元のJAとも協力し、山口市秋穂二島のライスセンターの前の荒れ田を借りてモデル栽培を始めたのが、8年前の2009年のこと。その試験田でいきなり、反1トン近い収穫を上げることができたのです。

しかしながら、それだけの多収穫を目指すためには、肥料代が2倍近くも必要、その肥料代は、秋川牧園の鶏糞堆肥を無償供給して応援することにしたのです。

 

飼料米栽培技術の向上に期待が高まる

さて、この話が山口市から広く県内に拡がり、多くの元気で熱心な生産者がこの専用品種飼料用米多収穫栽培に参加しました。秋川牧園では、いち早くその多収穫栽培に対する表彰制度を設け、年2回、生産農家の全部の圃場を生産者が揃って巡回し、その技術と成果を競う、表彰制度を立上げたのです。

アグリロハス、秋川牧園、飼料米、飼料用米

2017年3月に生産者が集い、飼料米勉強会を開催。

その後、山口県に飼料用米推進協議会が設立され、技術指導と共に、山口県の飼料用米多収穫栽培に対し、表彰制度が設けられ、その推進にますます力が入ることとなります。戦中、戦後の食糧難の時代を経て、その真反対の米余り現象の始まり、国は減反政策等種々の余剰米対策を講じましたが効果は少なく、今、飼料用米専用品種による余剰対策に力が入れられているところです。

 

飼料用米が、故郷を守る

日本の農地は、お米で支えられています。食用米が余るということで放置すれば、すぐに荒廃田となり、復活は事実上困難なものとなるでしょう。地方が荒れ、地域が荒れ、日本のふるさと、田園の風景が崩壊してしまうことでしょう。日本の食糧自給率は40%を切る情況が続いており、先進国では最低の自給率。気象変動等で大きな不作となった場合には、外国の生産国では、自国民を飢えさせてまでして輸出はしてくれません。

一定の食糧は、自国で自給する覚悟が大切なのです。そのためには、価格差等についての一定の応援が長期的に継続されることが肝要です。飼料用米を恒久的な政策として、国民の理解と応援の中で進められることが大切です。

また、生産段階で、可能な限り収穫量を増やし、生産コストを落とす農家側の努力も求められます。

秋川牧園では、堆肥の地域循環、専用品種による多収穫低コスト栽培、さらに、国の応援もいただいて、低コスト保管タンクを完成することができました。飼料用米栽培の日本モデルとなり得るよう、その挑戦と努力を続けて参ります。

では、皆さん、8月号でお会いしましょう。

秋川牧園の商品一覧

おためしセット