更新日:2017年06月07日
あなたの畑・あなたの牧場がここにある(アグリロハス6月号)
いざと言う頼みの綱、抗生物質が効かない?
あなたが重篤なガンの大手術が必要な時、また、風邪をこじらせて、肺炎という危機にある時、「あなたに効く抗生物質はありません」とお医者さんに言われたら、どうしたら良いのでしょうか?
今、抗生物質のおかげで、乳幼児の疫痢、また、負傷による事故死も減少しました。また、1950年から1960年代、若者の多くを死に追いやった結核等を激減することに成功したのも、ストレプトマイシン等、抗生物質、抗菌剤等の大きな貢献があったからです。
では、なぜ今、それが効かなくなるという世紀の危機を迎えることになったのでしょうか?その答として、まず浮かぶのが、人体への抗生物質の乱用があります。しかしながら、実際には、それをはるかに上回る危惧があるのです。実は、抗生物質の使用量は、病気の治療のために病院で処方される分量よりも、養殖魚や畜産で使用される量の方がはるかに多く、さらに、人に使われる抗生物質は、それが開発されると、やがてすぐに養殖魚や家畜に使用されています。
耐性菌の被害は、病院よりも、食べ物から来る被害の方が、はるかに心配であり、食べ物に含まれる抗生物質のほとんどは、加熱しても分解されずに体内に入る事について、しっかり知っておく必要があるのです。
養殖魚と畜産の世界耐性菌のその源泉に迫る
なぜ、人の病気のために使われる抗生物質の量よりも、養殖魚や畜産に使われる抗生物質の量の方が多いのでしょうか?
それは、人の環境よりも、養殖魚や畜産の飼育環境の方が、圧倒的に悪いからなのです。
養殖魚は、網で囲った生け簀すの中に、何千、何万もの魚を押し込みます。魚と魚がぶつかるような密飼いの不衛生な中で、魚の糞と、抗生物質の入った餌の残ざん し 滓とが混ざり合う水の中を泳いでいることになるのです。
今、養殖魚の世界でも、抗生物質の投与についてその努力が進められており、期待とともにエールを贈りたいものです。
養鶏や養豚等の畜産の現場はどうなのでしょう? 太平洋戦争の敗戦の貧困と食糧難から立ち直りを見せる中、海外から、ケージ養鶏の技術が日本へも押し寄せ、多段式のウインドウレス鶏舎(無窓鶏舎)への詰め込み飼育が養鶏場の主流になって行きました。不健康な暗い鶏舎の中に、牢獄のように鶏が詰め込まれれば、もはや、鶏舎は病気の巣窟となり、その対策として、多種類、大量の抗生物質が鶏に家畜に使われて行くことになります。
当時は、まだ飼料安全法等の法整備も無い時代、畜産や養殖魚等への抗生物質の乱用は、ほぼ、野放しの状況にありました。養鶏場の主の仕事と言えば、この鶏病対策に追われる日々。当時ポピュラーだった人体用の抗生物質は、価格が安くなると、ただちに畜産や養殖魚にと、大量に使用されて行く、そのような時代だったのです。
海外では、さらに深刻…
私たちは、2009年頃から、海外の食の安心安全の状況について、積極的に調査を進めてきました。
正直な所、海外の開発途上国の多くは、食の安心安全のレベル、畜産物への抗生物質の乱用等について、一部には目を覆うものが見られます。
鶏肉で言えば、食鳥処理設備には、海外からの先進的な処理機械が導入されていて、その規模だけ見れば、日本の設備を上回るものも少なくない。しかし、農場の飼育成績、特に鶏病の発症の度合い、抗生物質等の投薬と休薬管理等に至っては、日本と比べれば、決定的とも言える遅れの実情があるのです。特に、病原性大腸菌症の対応にはその遅れに著しいものがあり、投薬を中止して、法的な休薬期間を守れば、鶏が病気で全滅してしまうという危機が、日常的な有様として見られます。
無投薬の輪を世界に広げよう
人の一生の間には、怪我や病気のリスクはあるものです。例えば怪我をしないということだけでも、やり遂げることは中々難しいことでしょう。大きな怪我をすれば、化かの う 膿して、死に至る危険があります。この化膿を止めるには、やはり抗生物質が必要です。
インフルエンザからの肺炎の合併症も生命の危険があり、手早い抗生物質の投与が肝要です。生活習慣病とも言える心筋梗塞、脳血管症、さらに、ガンの手術のように、場所によっては重篤で長時間の手術になるものについては、抗生物質が効くか効かないかが、生命に関わるものとなります。
秋川牧園では、無投薬飼育が特に困難と言われてきた鶏(採卵鶏、肉用鶏)について、世界の中でいち早く無投薬飼育の事業化を達成。現在では抗生物質等を使用しないで、その出荷率が平均100%に近いという成績の継続を達成しています。これからはさらに、その技術の普及に向け、世界への貢献を進めて行きます。
皆様の一層の応援をお願い致します。