この問題を理解するには、まず一般的な養鶏における形態から理解する必要があります。
下にあるのは、若鶏の鶏舎の中の写真です。左が秋川牧園の鶏舎、右が一般に普及しているウインドレス鶏舎です。
秋川牧園の鶏舎は、側面が金網になっていて、カーテンを開閉する仕組みになっています。日光や自然の風が入る「開放鶏舎」といわれるものです。若鶏の場合、1坪に30~35羽くらい飼育します。
これに対し、ウインドレス鶏舎とは、窓(ウインドウ)のない鶏舎で、全て壁で囲まれており、中はポツポツと電球がある程度でとても薄暗い。自然の風が入らないため、換気扇で強制的に換気するため、そのゴーという音が不気味に響きます。大体1坪45羽~60羽、多い場合ではそれ以上という超詰め込み飼育。その暗い鶏舎の中で、鶏たちはいつ日が昇ったか、日が沈んだかも知らないまま、出荷の時を待つのです。
ウインドレス鶏舎が増えてしまった理由は、激しい価格競争に生き残るため、生産者が規模拡大によるコストダウンを目指したことにあります。狭い土地と建物で、手間をかけずに多くの鶏を飼うため、詰め込み飼育のできるウインドレス鶏舎が普及したのです。また、暗くすると、鶏は運動量がグッと減るので、ずいぶん餌代も少なくてすむのです。
ところが、この詰め込み飼育は病気の多発を招きます。ストレスもたまるし、病気はうつりやすいし、紫外線がないことも病原菌にとって居心地がよいのです。そこで、登場するのが、「抗生物質」。病気が出てからでは遅いので、最初から餌の中に数種類の抗生物質が入れてあるのです。 しかし、この抗生物質の多用は、「耐性菌」という抗生物質が効かない病原菌の発生を招きます。これは食品を通して微量に抗生物質を取りつづけても発生しうる問題です。以前、バイコマイシンという最新の抗生物質すら効かない耐性菌が、輸入鶏肉から見つかって大きな問題となりました。多くの細菌性の病気を克服したかに見えた人類ですが、21世紀は再び病原菌との対決の世紀になろうとしているのです。
秋川牧園では、この抗生物質を一切使用しない若鶏の飼育技術の開発に今から約30年以上前から着手。実に80をこえる改善や開発により、日本で初めて、ひよこの時から一切抗生物質を使用しなくても、若鶏が元気に育つ無投薬飼育技術を確立しました。 このことは、先ほどお話した耐性菌の問題の解決になるだけではなく、いかに秋川牧園の若鶏が健康的な環境で、元気に育っているかを物語っているのです。
農薬や薬に頼らない農業。これは秋川牧園にとって、創業以来の大切なテーマなのです。